2024/01/05投稿者:内田 勇夫

外国人被災者との接し方

災害時に外国人が直面する課題

災害に関する知識が少ない

例:

  • どのようにして災害が起きるのか知らない
  • 災害発生前に、十分な備えをしていない
  • 災害発生時に、どのような行動をとったらよいか分からない
  • 避難所の場所、受けられるサービス、ルールなどが分からない

 

災害に関する情報が少ない

例:

  • どこから情報が得られるかを知らない
  • テレビ、新聞等で報道される日本語情報を理解できない
  • 正確な情報と嘘・噂の判断ができない

 

地域とのつながりが少ない

例:

  • 身近に信頼できる人や助けてくれる人が少ない
  • 避難生活で安心して分からないことを聞ける相手が少ない

 

やさしい日本語

日本で生活する外国人の方の多くは、簡単な日本語を使って会話ができます。入手した情報をそのまま翻訳するのではなく、不要な情報は削除する、意味が伝わるように情報を加える、主語と述語を近くにおく、一つの文に複数の情報を入れないなどにより、文章を短く、明確にするとより伝わりやすくなります。

 

  • 北陸地方を台風が通過する恐れがありますので、警戒してください。
    ⇒台風が近づいています、気をつけてください。

 

  • 大雨の影響により河川が増水し、はん濫危険水位を超えています。堤防を越水するおそれがありますので、以下の地区には避難指示が発令されています。
    ⇒強い雨で川の水が増えています。川の近くは危ないです。すぐに避難所 (みんなが逃げるところ)に行ってください。外に出るときは注意してください。

 

災害多言語支援センターとは

大規模な災害が発生した際には、被災地における外国人支援のための活動拠点として「災害多言語支援センター」が設置されます。

 

設置主体

市町 ※被災地が複数の市町に及ぶなど、広域的な支援が必要な場合は、県による設置も想定

 

設置基準

例:

  • 災害対策本部が設置される災害が発生した場合(震度5強以上の地震が発生した場合など)
  • 避難所に多数の外国人住民が避難した場合 など

 

設置場所

例:

  • 被災地に近い場所で安全が確保されている場所
  • 日頃から外国人に親しまれている場所 など

 

活動内容

例:

  • 災害情報の収集・翻訳、多言語情報の発信
  • 避難所巡回による多言語情報の提供や外国人被災者のニーズの把握 など

 

多言語表示シートやピクトグラムの活用

外国人に情報を伝える際には、外国人の母国語で翻訳・通訳して直接伝える方法以外に、災害時に外国人が必要と思われる情報を多言語で表示する掲示物を活用したり、図を用いて視覚的に情報を伝える手段が有効です。

(一財)自治体国際化協会のホームページから、災害時多言語表示シートや災害時用ピクトグラムをダウンロードすることができます。これらの媒体を活用することで、効果的な外国人支援活動を行うことができます。

 

災害時多言語表示シート

  • 災害時に避難所などでよく使われる日本語が多くの言語で書かれたシートで、あらかじめ必要なシートを作成し、印刷することにより活用する
  • 多くの文例があり、対応言語は、日本語のほか、やさしい日本語、英語、ロシア語、スペイン語、タガログ語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国・朝鮮語、ベトナム語、ネパール語、インドネシア語、タイ語、ポルトガル語、ミャンマー語を自由に組み合わせ、3~5言語まで表示することが可能

http://dis.clair.or.jp/open-data/dis-sheet/list/1(自治体国際化協会ホームページ)

 

災害時用ピクトグラム一覧(16種類)

  • 「絵文字」「絵単語」などと呼ばれ、何らかの情報や注意を示すために表示される視覚記号(サイン)
  • 災害多言語表示シートと同様に、あらかじめ印刷しておくことが可能

http://dis.clair.or.jp/open-data/dis-pictogram/list/1(自治体国際化協会ホームページ)

災害時に外国人から寄せられる相談事例

過去の災害時に外国人被災者から多く寄せられた相談事例と、回答例を掲載します。ただし、被災者の状況は一様ではなく、被災者の状況に応じた対応が求めれます。

 

日常生活

Q.どこに避難すればよいか。

A.あなたは今どこに住んでいますか。(○○市〇〇町です)〇〇が避難所になっているので、身分を証明するものや大切なものを持って避難してください。

 

Q.避難所とは何か。

A.無料で水や食料などをもらえ、寝泊まりすることができる場所です。

 

Q.住んでいた住居が全壊してしまった。

A.まずは、市役所・町役場で罹災証明書をもらってください。応急仮設住宅の申請をする場合に必要となります。申請手続きについて市役所・町役場に確認してください。壊れた家が持ち家で保険に入っている場合は、保険会社に連絡してください。賃貸住宅の場合は、大家に連絡してください。

  • 【罹災証明書】被災した家屋などの被害の程度を証明する書類。市町村が現地調査を行い発行するもので、全壊・大規模半壊・半壊・一部損壊・全焼・半焼・床上浸水・床下浸水・流出などの区分で被害の程度を認定する。被災者生活再建支援金や災害復興住宅融資など被災者支援制度の適用を受けたり、損害保険の請求などを行う際に必要となる

 

Q.住居が壊れ大量のゴミが出た。

A.災害ごみは、通常のゴミ捨てとは異なる方法で収集されます。詳しくは、市役所・町役場に確認してください。

 

Q.風呂はどこで入ることができるか。

A.避難所に風呂はありません。臨時入浴施設が開設される場合があるので、避難所の掲示板等で確認してください。

 

Q.生活費がなくなってしまった。

A.罹災証明書を提出することにより、災害支援金や生活費の貸付を受けられる場合や、税金や保険料が免除となる場合があります。市役所・町役場に確認してください。

 

Q.震災で雇用を打ち切られてしまった。新たな仕事を探したい。

A.ハローワークで就職のあっせんや職業相談を受けることができます。

 

Q.小学校・中学校・高校・大学はいつから始まるか。

A.小学校・中学校・高校・大学に確認してください。小学校・中学校の場合は、学校から電話等で連絡がある場合や、近くの避難所の掲示板等で知ることができる場合があります。

 

食事

Q.水や食べ物はどこでもらえるか。

A.避難所でもらえます。または、臨時に給水場や給水車が設置される場合もあります。配付時間等の詳細は避難所運営者等に確認してください。

 

Q.避難所の食事に使われている食材を知りたい。

A.避難所運営者等を通じて、使用されている食材を確認してください。

 

Q.宗教やアレルギーにより食べられないものがある。

A.避難所には特別な食べ物はありません。近隣の店舗で食べ物を購入してください。

 

Q.子どものミルクや離乳食はどこでもらえるか。

A.避難所運営者等を通じて、ミルクや離乳食を配布している避難所の場所、配付時間等を確認してください。

 

災害時の外国人支援に役立つ情報

  • 災害時多言語表示シート、ピクトグラム、多言語避難者登録カード、災害時多言語支援啓発動画等(自治体国際化協会)
    http://dis.clair.or.jp/

 

  • 災害多言語支援センター設置運営マニュアル等(自治体国際化協会)
    http://www.clair.or.jp/j/multiculture/tagengo/saigai.html

 

  • 自治体国際化協会多文化共生関連ホームページ
    http://www.clair.or.jp/j/multiculture/

 

  • NPO 法人多文化共生マネージャー全国協議会ホームページ
    過去の災害時における協議会の活動実績や研修案内等を掲載
    https://www.npotabumane.com/

 

  • 外国人のための防災ガイドブック(石川県国際交流協会) 
    http://www.pref.ishikawa.lg.jp/kokusai/tabunka/bousaigaido.html

 

  • 防災の手引き(首相官邸)
    災害の種類、特別警報・警報・注意報の概要等を紹介
    https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/index.html

 

  • eカレッジ 防災・危機管理(総務省消防庁)
    http://open.fdma.go.jp/e-college/

 

  • 消防防災博物館(消防防災科学センター)
    消防防災の歴史や基礎知識、過去の大規模災害の概要等を紹介
    https://www.npotabumane.com/

 

 

※石川県災害時語学サポーターハンドブックより一部抜粋しています。